ほとんどの社会人にとって、上司やクライアントなど敬うべき相手との交渉は、仕事の成功への鍵だと言えるでしょう。
交渉をうまく進めるためには、相手と円滑なコミュニケーションを取りながら、なおかつ自分の要望を叶えられるように会話を進めていく「交渉力」が必要です。
しかし交渉に欠かせない武器とも言える「会話」を上手く使いこなせずにいる人は、現代には若者をはじめまだまだ大勢います。
今回では、コミュニケーションや交渉についての専門家の意見を参考に、駆け引きに打ち勝つための、自分に有利な会話のすすめ方についてまとめてみました。
やってしまいがちなマイナス言動についても触れていますので、交渉が上手くいかず悩んでいる方は是非読みながら振り返ってみてくださいね。
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STEP1 若い世代の「会話」への意識と実状
働き盛りの若い世代にとって、仕事相手との交渉はどんなものでしょう。
会社に務める20代の人たちに話を聞いてみると、自身の会話力についての自信のほどや、交渉をする場面で注意していることなどがわかりました。
まず、全体的に彼らは自分の会話力には自信がないようです。
交渉する機会と言えばクライアントや上司を相手にすることがほとんどの世代層なので、当たり前の結果かもしれません。
調査の対象となったうちおよそ1割は自分の交渉力に自信があると答えていますが、残りの9割は自信がないと答えました。
さらに、仕事相手や上司と対話を通し、自分の要求を通すことに成功した経験があるか?
要は、交渉がうまくいったか?
という質問にも、成功したと答えたのはたったの2割でした。
多少割合の違いはありますが、会話に自信がない人と交渉に自信のない人の数は同等とも言え、若者にとって会話や交渉は仕事上の課題として捉えられているようです。
それでは何故、交渉がうまくいかないのか。理由を尋ねると、様々な回答があった一方で半数以上が同じ回答をしていました。
それは、「交渉についての技術を知らない」ということです。
複数回答可能なアンケート調査だったのですが、全体のうちおよそ6割がこれを理由に挙げていて、続いて5割が「物事を順序立てて建設的に話すことが苦手」だと答えています。
どちらも会話においてのスキルが足りない、知らない、という共通点がありますね。
その他、3割ずつ「相手に強く言えない」「相手との関係性や相手の事情が気になる」等の理由を挙げています。
このことから、会話スキルの他にも、圧倒的に目上に囲まれている世代だからこその理由が浮き彫りになってきました。
しかしながら、彼らもこの問題を克服するべきだと感じているところはあるようで、8割以上が「交渉の腕を磨くことは仕事の成功に繋がると思う」と答えています。
■仕事で交渉した時の体験談
ここで、20代の社会人の人々から直接聞くことが出来た体験談をいくつか紹介します。
【勝利の鍵となったポイントは?】
・仕事のやり方についての悩みや改善点を身近な先輩に伝えても状況が変わらなかったので、部署の一番偉い人に相談して自分の要望を通した。(20代 男性)
・クライアントに契約条件を提示しても相手にしてもらえなかった時に、事前にリサーチしてあった他社のデータから自社との違いを明確に伝えて、結果契約してもらえた。(30代男性)
・正直仕事が増えて非効率だな…と感じた提案が出ていたが、提案した本人の話はしっかり聞いて同意もした上で、より効率的に進められる方法を提案したところ採用された。(20代男性)
・どうしてもクライアントの要望に答えられない時には、誠意を持って必ず代案を用意するようにしていた。そうすると、かえって契約を貰えたりしたことがあった。(20代男性)
【日頃から気を付けていることは?】
・自分の要望を通すのが上手い先輩や同僚をよく観察して交渉術を盗もうとしている(20代男性)
・交渉したい内容や仕事の話以前に、交渉相手に一人の人間としてどんなことを考えどんな人なのか?極力事前に知ろうと心がけている。(20代男性)
・交渉に入る前に日常会話を交え、お互いにリラックスした雰囲気で臨む。(20代女性)
・大切な交渉でも背伸びせず、確実でないならば安易に引き受けないようにしている。(20代女性)
【交渉に負けてしまったエピソードは?】
・苦手な相手は、横柄で嫌な感じの言動をあからさまに出してくるようなクライアント。相手の言いなりになった方が波風立てずに済むので、交渉もうまくいかない。
・上司や先輩の言いなりになってしまい、期限が差し迫った仕事があったのに追加でとてもこなせない量の仕事を引き受け失敗したことがある。(20代男性)
・理不尽な言いがかりを言ってきたお客様に対して、咄嗟のことで驚いて平謝りしてしまった。毅然と対応すべきだった。(20代男性)
・予定よりも早く商品を送ってもらえるよう依頼先に頼むのだが、毎回交渉に取り合ってもらえない。(20代女性)
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STEP2 対話をする時に必要な考え方
後述の実際に起きた体験談からのアドバイスをより深く理解してもらうために、まずは交渉に臨む前に交渉とは何か?ベーシックな知識をお伝えします。
■互いの合意を目指すことが目的
「交渉」という言葉を聞いて、まるで悪いことをしているようで気が引けるという人も未だにいるのではないでしょうか。
確かに昔ながらの考えでは、交渉とは自分や自社の思惑通りに事を運ばせるために持ちかける、心理戦という意味合いも含まれていました。
しかし、自分たちさえ良ければそれで良い、自分たちが結果を出したいがために相手を犠牲にしたとしても構わないという考えの交渉は、現代ではすでに時代遅れだと言われています。
気分が良いものでもないですし、昔と違って今の世の中は財産となるようなものも減り、不景気な社会なので企業は互いに協力し合う必要があります。
そこで、最近はお互いの納得出来る「間を取る」ための交渉が主流として行われています。
向こう見ずな考えで美味しい話に飛びつくのではなく、長い時間をかけて関係を築いていく事を前提に、そしてお互いに良いことがあるような交渉がこれからの時代には必要なのです。
■まずはこれから実践しよう!交渉を成功させるための3原則
何事も成功させるには基本を知っていることが必要不可欠です。
相手のあることなので交渉にこれをやれば良いという正解はないですが、良い対話をするにあたって必ず実践したい3原則があります。
これらを踏まえた上で、成功や失敗を元にオリジナルの交渉術を創り上げていくのが理想的です。
○その1 事前に自己分析をしておく
相手の心を動かすプレゼンをするには、自分が本当に思っていることを丁寧に噛み砕き、理解した上で相手に伝えるべきです。人の心は上辺だけの言葉だけでは動かせません。
反対に、真実が込められた言葉には説得力が伴います。
あなたが何かの商品を相手に勧めたいのであれば、その商品を自分自身が深く理解し、自分なりの考えを持って、相手に勧められるポイントを把握する必要があります。
それらを含めて、交渉に臨む前には自己分析をすることが大事です。
自分が何をどう感じているか、会社の考えや会社と自分の立ち位置など、理解したことを軸にしてようやく説得力のある人物になれます。
話していてもブレのある返答が多い人物には、人は自然と心を閉ざしてしまいます。
事前にしっかりと自分の現状を見つめ、把握しましょう。
○その2 すべて逆の立場になって考える
交渉とは、自分と相手の双方に良い着地点を見つけることであり、自分本位な結果を出すことを指すのではありません。
良い交渉にするためには、必ず相手のことを最大限気にかけなくてはいけません。
人として重んじることはもちろん、例えば、自分の話をどう捉えてくれているのか、この提案には賛成なのか反対なのか、他に意見を持っていたりしないか…。
それらを言葉だけではなく、相手の行動や仕草すべてから読み取ることが求められます。
それには少しでも相手がどのような人物でどんな考え方をするのか、どんな状況・立場にいるのか、事前に知ろうとする努力も必要でしょう。
○その3 大事なことは「具体的」かつ「単刀直入」に
どんなに熱意がこもったプレゼンをしたとしても、情報量が多すぎたり的を得ない話し方をすれば、あなたが望むことが何なのかは伝わりません。
交渉で自分と相手の納得出来る着地点を見つけたくても、そもそも何が望みなのかがわからなければ始まりませんね。
相手に伝えたい様々なことから、自分の要求を「具体的」かつ「単刀直入」にまとめて伝えることが必要です。
そのためにはその1でもお話ししたように自分を分析しなくてはいけません。
何が一番の望みでどうしたいのか、的確に把握して言葉にする作業は、自分の心の中を把握していないと出来ないことです。
交渉や提案に取り合ってもらえないと感じた経験があれば、それはもしかすると要求がうまく相手に伝わらなかったのかもしれません。
単刀直入に、具体的に要求を示すことで、状況は少し変わるかもしれません。
交渉のテクニックは他にも多く存在しますが、まずは大前提としてここまで挙げた3原則を意識することが必要不可欠です。
これらを念頭に置いて、この後ご紹介する内容を読んでいってくださいね。
■何故「交渉」がこれほどまでに重要視されるのか
ここまでで何度か仕事を成功させる鍵が交渉にある、と書いてきましたが、何故それほど重要な事項とされるのでしょうか。
まず、仕事をしていく上で一人が成し遂げられることはとても少ないです。仕事に限らず日常にも言えることですが、絶対にどこかで他社と誰かと関わり、共に過ごし、人と人との繋がりがあって始めて生活が成り立っています。
他人同士が関わり合うことで、大きな仕事を成し遂げ、社会に貢献することが出来ます。
様々な価値観や資産や要望を持った他人同士が関わり合う上で、一方的な力関係にならずにより良い状況を生み出すためには、お互いに納得出来る道を探せる「交渉」が必要不可欠なのです。
もしも人に対話する力、交渉の技術がなければ、個人個人の考えに囚われたまま、どちらかの側に偏った結論しか出せなくなってしまうでしょう。
それに、前述の通り交渉には自分を見せ、相手の立場になって考え、お互いに利益をもたらす結論を探す姿勢が不可欠です。
交渉の基本的なことですが、これらはお互いを理解し合うということにも繋がっています。
対話を重ねて相手の数だけある考えや価値観を知ることは、自分の意見だけを持って過ごしていくよりもより広い視野で物事を捉えることが出来るようになり、自分自身の心を豊かにすることも出来るのです。
また、様々な人間関係を築けるという仕事面で有利なところもあります。
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STEP3 相手によって使い分ける交渉術アドバイス(身内といえる相手の場合)
同じ部署や同じ会社など、上司や先輩という目上であっても立場として身内側と言える相手との交渉の機会もありますよね。社外とはまた違い、同じ社内にいるからこその注意点やコツをまとめてみました。
・失敗ケース①
予定のある日に定時退社をしたかった「私」。
私は、成功するかわからなかったがダメもとで上司に「この日に定時退社したい」と伝えます。
しかし仕事の進捗を心配した上司が、「定時退社して仕事が終わるのか?」と嫌そうにしていたので希望を取り下げた。
・改善策:要望をしっかり持ち、相手を説得するだけの情報を伝える
この「私」のケースは改善出来るところが2つあります。
まず1つ目は、ダメ元の相談をしてしまったこと。
希望があるのであれば、強い意思を持って伝えるようにしましょう。
意思が弱いまま交渉に臨んでしまうと、相手の反応によってその希望を曲げてしまいやすくなります。
下手をすればたまたま虫の居所が悪かっただけの場合でも、希望を取り下げてしまうのです。
交渉が上手くいかなければ結局その後上司に対しても信頼感が薄れてしまうことにも繋がるので、そうならないためにも自分の希望は断固として伝えましょう。
2つ目は、同時に相手に快く思ってもらえそうな情報を伝えること。
このケースの場合だと、上司が定時退社を渋るのは仕事の進捗が気になっているからですね。
本当に大丈夫だった場合でも一言伝えるだけでは説得力に欠けるので、どうしても定時退社したいという決意を胸に、仕事をどのように終わらせる予定でいるのか、具体的な情報を示しましょう。
上司の心配を取り除けていれば、定時退社にも快諾してもらえていたかもしれません。
・失敗ケース②
絶対に実現させようと意気込んで自分のアイデアを企画書におこし、ディスカッションの場で大量の資料を使ってプレゼンまでした。
それなのにプレゼンの手応えを全く感じられず、結局アイデアも採用してもらえなかった。
改善策:プレゼンは要点が印象に残るように工夫を!
繰り返しですが、要領を得ない提案や要望は、どんなに熱意が込められていたとしても相手には響きません。
あなたの企画を相手に理解してもらいやすくするためには、必要最小限の情報量で的確に伝える必要があります。
企画を通したいという気持ちがあればあるほど、言葉が増えていってしまう人がいます。
しかし、本当に伝えるべきことは何なのか?
冷静に向き合い推敲していくことこそが、プレゼン成功の鍵です。
では何をポイントにすれば良いかと言うと、
1つ目は簡潔にまとめたあなたの主張です。
2つ目は、提案された企画が会社や自分たちにどうやって利益をもたらすかです。
相手の立場になってみれば、この2つが特に聞きたい情報だということは明確ですね。
細かな数字や分析結果など、その他の付随する情報は相手が企画に興味を持ってくれて始めて役に立つ情報です。
あくまで企画に説得力を持たせるためのオプションと考え、まずは単刀直入に相手の心を掴めるようなプレゼンを目指しましょう。
資料や映像を上手く使って、文字でシンプルに主張やメリットを伝えるとより印象に残りやすいでしょう。
・失敗ケース③
直属の上司に太鼓判を押してもらったはずの企画だったが、その場限りで終わってしまい話が流れそうになってしまっている。
さらに上の立場の人間には話すら伝わっていない様子だ。
改善策:直談判も恐れず積極的に!
このようなケースの失敗は、自分に否があるというよりは、運がなかったと言わざるを得ないことがほとんどです。
企画を本格的に動かせる権限の持ち主と上司の関係が悪いのか、上司が単に忘れてしまいやすい性格なのか、様々な問題が考えられます。
上司の人間性やその周囲の人間関係などが障害となって、せっかくの企画が通らないなんて勿体ない話です。
こういった場合の改善策は、権限のある人物に直談判してみること。
一度通らなかった企画を他の人に掛け合うということは、なかなか思いつかないかもしれません。
確かに上司から伝えてもらえなかったので…など上司の面子を潰すようなことはご法度です。
上司やその周囲、権限のある人物との繋がりなど人間関係に注意を払う必要もあります。
しかし、上司に企画を承諾してもらえた時点で役員などへ交渉しにいくことを提案し、付き添ってもらえるよう頼むなど、角が立たないやり方はいくらでもあります。
本当に企画が通れば全員にとって利益がありますし、あなた自身も上司から役員から一目置かれる存在となれるチャンスでしょう。
万が一企画が通らなかったとしても、それは上司から伝わっていても同じ結果だったはず。
伝わらなければ始まらないのですから、試してみる価値はあります。
■事前準備こそが腕の見せどころ!
ベテランで経験豊富な人であっても、何も準備をせず咄嗟の対話で交渉を成功させるのは本当に難しいことです。
実際、交渉当日に発揮する力は2割で、残りは前日までの取り組みに注いでおくべきだと言われています。
自分が伝えたいことが何なのかしっかりと見つめ、伝えるべき言葉を推敲しておくこと。
相手の立場になって考え、相手が求めていることや普段から大切にしていることは何なのか、よく知っておくこと。
そして、あなたの要望が仮に叶えられるのだとしたら、それは今後何を意味するのか、何のための交渉なのかもしっかりと捉えておくべきです。
特に先の展望が見えているということは、目先の利益に囚われずにこの交渉を最終目標への足がかりにしていけます。
そういう意識で臨めることで、程よく力を抜いて本領を発揮することが出来るでしょう。
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STEP4 相手によって使い分ける交渉術アドバイス(取引先やクライアントの場合)
交渉する相手がクライアントや他社に務める人物など、自分の会社の人間ではない場合は余計に相手の立場になって考え、丁寧に対話を重ねることが求められます。
身内と言える社内とはまた違うからこそ起こる失敗談と共に、円満に合意を得られるようにする為のポイントをまとめました。
・失敗ケース①
初めて訪問した営業先で、研修で習った通り自社の概要や企業理念、取り扱いの品がまとめられた資料を配り、是非資料を読んでもらえるように勧めて帰ってきた。
改善策:目的は資料ではなく、あなたや会社と相手を繋げること
会社の研修では、もしかするとこの例のように資料を配り、相手に会社について知ってもらうことを推奨しているところもあるかもしれません。
でも、相手の立場になって考えてみてください。
突然訪問してきた知らない会社の新人営業マンに資料を渡されたところで、その資料に目を通そうと思うでしょうか?
商品の購入や取引を考えるどころか、資料を読もうとすらしないのが普通ですよね。
新規のクライアントを訪れる時の目的は、挨拶を通してあなたという人物と自社の紹介、特にクライアントにとってどんなことに力になれる存在なのか?
アピールをすることです。
もちろん、そのアピールも自分の言葉で説得力のある説明が出来るよう、事前に分析する必要があります。
また、相手に心を開いてもらい関係を築くためにも、自社のことだけでなくあなた自身のことを知ってもらうことも大切です。
あなたの目的や考え、自社の魅力が伝われば、クライアントもそれに応えて困っていることや、求めていること、条件などを提示してくれるでしょう。
資料で済ますのではなく、まずは対話を通して自分と相手の距離を縮めることが、交渉をすすめるための第一歩です。
・失敗ケース②
自分の不手際で先方に不利益が生じてしまい、迷惑料を払う意味を込めて該当の商品を当初よりも安く譲りたいと話したところ、何故か納得してもらえず2重クレームに発展してしまった。
改善策:ミスの代償を何で支払うか、自分だけで決めてはいけない
自分や自社が原因で何らかの不利益を相手に与えてしまった場合、問題点を反省し可能な限りフォローを試みることは当たり前のことです。
しかし、どんなフォローをするべきかは問題の内容や相手の状況によって異なります。
自分としては「安くなるのであれば問題ないだろう」と思ったとしても、それで今回の件を飲み込めるかどうかは相手やその状況によっても変わるもの。
特に、何でもお金で解決しようという考えはよくありません。
提案するにしても相手にとって不快感を与えないよう配慮する必要がありますし、それを注意するには相手がどんな立場で状況か、そこに今回のミスが加わってどのような損害を受けたかを把握しておくべきです。
その上で、提案する時にはきちんとお詫びを伝えた上で、こうしたいと考えているがご迷惑にはなりませんか?というスタンスであくまで相手に選んでもらうことが必要です。
もちろん、提案する内容は自分たちが可能な範囲の中で一番良い方法を惜しみなく伝え、誠実に向き合うことを心がけましょう。
・失敗ケース③
習得した交渉術を駆使したら大成功して、自分の方が優位に立った状態で交渉をすすめることが出来た。結果にも満足している。
改善策:交渉の目的は「WIN-WIN」であることを忘れない!
確かに交渉にある程度テクニックは必要で、例えば「最初に難易度の高い条件を提示して、交渉を重ねてこちらが少しずつ折れていく」ことで自分の思った通りの結果を出す方法があります。
基本的な技術とも言えますが、だからこそあまりにも過剰な進め方をしてしまうと、相手にもその意図は伝わってしまいます。
交渉は相手との合意を目指すものであり、互いに納得感を得られることが本当に交渉に勝つということ。
敵対するような進め方で結果自分の要望だけが通ったとしても、結果に勝敗が付くような交渉は今後の相手との関係性にヒビが入る原因になりかねません。
お互いに良かったと思える交渉が出来たほうが、相手からの印象も良くなります。
自分や自社の未来を考えても、長い付き合いに発展することや他の機会でコネクションが役に立つことの方がよっぽど有益だと思いませんか?
中には、結果を残そうとするのではなく、あえて相手に合わせて交渉をすすめ、お互いの絆を作ることを優先する交渉をする人もいるくらいです。
・失敗ケース④
とても良いアイデアを思いつき、まとめた企画をぴったりのクライアントにプレゼンしたいと思った。
しかし会って話すのは時間を取らせてしまって申し訳ないので、メールで軽い紹介をし、アポイントを取れるか相談することにした。
改善策:本当に売り込みたい企画は顔を合わせて伝える
確かに事前にメールでアポイントを取るなど、相手の時間を取らせないという配慮は良い考え方ですが、それは時間を取らせる間でもない確認事項や形式的なやり取りに限りです。
本当に良いと思った企画なのであれば、時間を取ってもらってでも、突然の訪問だったとしても、勇気を持って直接プレゼンしにいきましょう。
どうしてもメールでは内容が伝わりにくいですし、同時にあなたの本気度も伝わりにくいのが実状です。
遠慮するのではなく、時間を取らせてしまった分聞いて損をしないような企画に仕上げれば良いだけのこと。
クライアントや取引先も、あなたの熱意や企画の良さが伝われば、時間を取って話を聞こうというモードになってくれるはずです。
■交渉相手がこんな人だったら?特徴別テクニック
タイプ①:強引に自分の話をすすめてくるタイプ
営業マンにも交渉のクセが様々あり、中でも注意したいのが強引に自分の話をすすめ、こちらの状況や利益を鑑みないタイプの人物です。
自分が交渉に勝つことを目標としているところがあるので、こちらの話をまともに捉えてもらえないでしょう。あなたの立場や感情もお構いなしかもしれません。
こういった人物との交渉は、そんな風なのでお話にならないか、強引さにこちらが負けて要求を飲まざるを得なくなるかのどちらかです。
自分のペースに持っていくことを好むタイプでもあるので、話すスピードや話し方もこちらと合わない場合が多いです。
さらに、負けじとペースに巻き込まれないようにしていても、少しでもこちらが相手の話に乗ってしまったものなら、どんどん自分の話を進めていきます。
こんな相手が交渉の場面で現れたら、例え何を言われたとしても絶対にYESを出してはいけません。
強い気持ちで相手の要求を拒みましょう。繰り返しているうちに、相手も諦めていきます。
しかし、今後も長く付き合いのある社内の上司や取引先などがこういった人物に当てはまる場合は、断る訳にもいかないですよね。
関係が続く相手なのであれば、あからさまに楯突くような事は言えません。
ただし、まともに取り合う必要もありません。恐らく同じような強引さで仕事を投げてくることが予想されますが、相槌を打ちながらも話を流すくらいの対応で十分です。
仕事を押し付けられても、うやむやに出来るものはしてしまいましょう。
別の有意義な仕事に取り組み、後から上司が思い出して急かしてきた時に初めて手を付けたって良いのです。
相手を鑑みない相手には、思い切って同じくらいの誠実さで向き合うべきでしょう。
タイプ②:卑怯な手口を使ってくるタイプ
社会人なのにそんなことをする人がいるのかと驚くものですが、一部ではズル賢い手段や法に触れるギリギリのことをして交渉に勝とうとする人がいます。
例えば、常識の度を超えて難しい条件を出してきたり、円満に合意出来そうだという段階になって条件を変えてきたり、こちらも相当利益主義のタイプです。
しかし、会社として大切にしている取引先の交渉相手としてそんな相手が現れてしまうと、泣き寝入りするしかないと相手の言いなりになってしまう人は少なくないでしょう。
実は、それも相手の手口のひとつです。
一度でも泣き寝入りしてしまうと、相手は「泣き寝入りするしかない立場と状況なのだ」と察し、それを良いことにさらなる無理難題をふっかけてくるようになります。
エスカレートさせないためには要求を安易に飲まず、この交渉の意義や出された条件への疑問を話題に出してみましょう。
出来ることなら、お互いの合意出来るポイントに距離がありすぎることを理由に交渉の延期を提案したいところです。
ここで重要なのは、相手の卑怯さなど人間性を攻撃することなく、あくまで冷静に交渉の状況について話し合おうとする姿勢です。
タイプ③:相手にストレスを与える目的で近付いてくるタイプ
日頃から私達人間は、自分と他人との間に一定のスペースを確保しようと無意識のうちに意識しています。
そのスペースのことを「パーソナルスペース」と呼び、その広さは人によって、そして相手との関係によって異なります。
これが他人に侵されると人は不快に感じ、身近で心を許せる相手であればあるほど、その不快指数は減るものとされています。
このように他人との距離は精神的にも影響を与えるものですが、この原理を使って交渉の時にやたらと距離を詰めようとしてくる人がいます。
距離を詰められた方は、無意識に不快に感じているせいで、思ってもいないことでもYESと相手の要求を飲んでしまうのです。
座っている相手に立った状態で話しかけ、見下したような構図を作るのも似たような効果があります。
意図的に圧をかけてくるタイプには、さりげなく距離を取り直す、同じ高さの目線になるように姿勢を変えるなど、意識的に状況を変えるようにしましょう。
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STEP5 相手によって使い分ける交渉術アドバイス(クレーム対応の場合)
誰もがやりたくない仕事のひとつが、クレームへの対処でしょう。
対応方法を知っていないとさらに炎上してしまう可能性もある他、単純に怒られるのは誰だって嫌ですよね。
STEP4に引き続き身内ではない相手ならではの失敗談の中でも、クレームを円満解決するためのコツをまとめてみました。
・失敗ケース①
電話口で延々と怒りながら話してくるお客様があまりにも同じことを繰り返すので、話の途中でも強引にこちらの話を進めた。
すると2重クレームに発展してしまい、最終的には売り言葉に買い言葉で収集が付かなくなっていた。
改善策:話を聞いてもらいたければ、相手の話を全部聞くこと
同じことを繰り返し、長い時間しかも怒られながら聞いていることは精神的にも辛いですよね。
しかし、お客様の目線になって考えれば、個人差はあれどそうなってしまっただけの理由を持っています。
お客様の言い分全てに共感は出来ないかもしれませんが、まずはお客様の気持ちに寄り添い、どう心が変化していったのかを把握することが必要です。
その為には、繰り返しになったりまとまりがなかったりしても、お客様が話し終わり自分の気持が伝わったと思うまで、話を聴く姿勢を貫きましょう。
こちらの提案や説明を聞いてもらうにしても、話し終わってもないのに何がわかるのか?と思われてしまいますし、人は言いたいことがある状態では相手の話は入ってきません。
反対に、丁寧に相手が話を聞いてくれていると、次第に冷静になれたり相手の話を聞く気になれることもあります。
・失敗ケース②
常識のない言いがかりをつけるお客様と話している際、刺激しないよう下手に出てお詫びの言葉をかけた。
しかし段々とエスカレートしていき、手に負えないほどのクレーマ―に変貌してしまった。
改善策:謝罪の言葉は適切に使うこと
お客様を即座にクレーマーと決めつけず、丁重に話を聞いて心に寄り添うことはとても大事なことです。
そして、自分や自社に少しでも不備があるのであれば、その点については心からお詫びを伝えましょう。
しかし、面倒だからと何でもかんでも謝れば良いというものではありません。
どこからどこについては謝罪を述べるべきで、どこからは対応しかねる部分なのか、お客様に寄り添う言葉を選びつつも慎重に精査する必要があります。
理不尽な要求、特にお金が絡んだことについては毅然とした態度でお断りし、可能な範囲の代案を出すべきです。
常識的なお客様だった場合でも、過度な謝罪は謝れば良いと思っているのか?と不快にさせてしまうこともあります。
常識の範囲を超えた要求や言いがかりをつけてくるタイプのお客様と接する場合は、相手のペースに乗らず、同調しすぎず失礼にならない程度の淡白なやりとりがおすすめです。
電話中の姿勢も前傾にならずデスクからやや距離を取ります。
そうすると対話に夢中になりすぎず、自分のペースを保ちやすいですよ。
また、電話対応であろうとも対面と同じような表情や動作をすると相手に与える印象は良いままでいられます。
無理に自分で解決しようとせず、早い段階で上司に頼り相談してみることも一つの手です。
・失敗ケース③
取引先に依頼中のプロジェクトについて、上司から指示された内容を自分ではよく理解しないまま、とりあえず取引先に伝言した。
改善策:理由や裏付けを伝えられるように心がける
確かに取引先は依頼されている側なので、あなたが上司からの指示で伝言をしただけだったとしても、相手はそれを受け入れその通りに作業を進めてくれるでしょう。
その場合、上司の指摘した点を変えただけの企画が後日完成するはずです。
依頼する側とされる側という関係性とはいえ、せっかく出来た繋がりをこのままにするのは勿体ないと思いませんか?
今後お互いの会社の絆を深める為、そして企画や商品をもっと良いものにしてもらう為にも、どうして変更が必要なのか、その裏付けや何を重要だと考えているのかなどをきちんと共有したいところです。
きちんと相手に伝えるためには、あなた自身が考えた自分の言葉で伝えられるよう準備する必要があります。
あなたのやる気や指示の意図を理解できれば、依頼された方も
「これは重要な変更なんだ」
「熱意あるクライアントに応えたい」
と思ってもらえるかもしれませんし、結果的に依頼したもののクオリティーや信頼度が高まり会社としても利益になります。
■クレームあるある・悪い対応例
お客様役:「購入した商品に傷が付いていました。どうしてくれるんですか?」
担当者役:「ご迷惑をおかけしており申し訳ございません。発送手配の最中にこちらで傷付けてしまった可能性があります。ご迷惑でなければ、改めて代わりの品を送らせていただくか、購入代金と同額をお支払い出来ればと思っていますが、よろしいでしょうか」
お客様役:「商品は回収してくれるの?」
担当者役:「大変お手数をおかけしますが、お客様にて着払いでこちらに郵送いただけますか?」
お客様役:「送り方がわからないんだけど!!」(どんどん感情的に…)
担当者役:「……えーっと…」
これはクレーム対応を体験するためのロールプレイングの一例ですが、一見もっともな対応に思えますね。
しかし、お客様は何故かどんどんヒートアップしています。
このやりとりの問題点は、お客様の心情を気にかけず事務的な内容を立て続けに伝えてしまっているところです。
確かに、最終的には話さなくてはいけない手続きの話ですが、やや時期尚早に思えます。
まずは冷静に手続きの話やあなたの説明を聞き入れてもらえるよう、お客様の気が済むまで心に寄り添う対応と声掛けを心がけましょう。
クレーム対応の対処が上手くなるにはある程度慣れも必要ですが、咄嗟に直面するとつい焦って言わなくてはいけないことばかりを意識してしまうという声が生徒役の方からも挙がっていました。
そしてそのせいで余計に相手をイライラさせてしまい、こちらもさらに焦ってしまうという悪循環に陥っていました。
■クレームあるある・良い対応例
専門家が担当者役をするならば、このようなやりとりになります。
お客様役:「購入した商品に傷が付いていました。どうしてくれるんですか?」
担当者役:「この度は誠に申し訳ございませんでした。恐縮ですが、お手元に届いた商品の状況を詳しくお教えいただけますでしょうか。」
お客様役:「新品のはずなのに、表面に細かい傷がいくつもあって。」
担当者役:「せっかくご購入いただいた商品にも関わらず、ご迷惑をおかけして申し訳ありません。ご迷惑でなければ、新品と交換させていただきたいのですが、今回届いた商品をこちらに送っていただくお手続をお客様にお願いすることは出来ますでしょうか。お手数をおかけしますが…」
お客様役:「交換してもらえるのであればよかったです。手続きしましょう。」
担当者役:「ありがとうございます。その他に不備が気になった点や、ご心配な点などございませんか?」
お客様役:「傷のところだけであとは大丈夫です。」
担当者役:「かしこまりました。それでは早急に新品をお届けし、商品と一緒に返品の手続き方法について詳細が書かれた冊子を同梱いたします。お時間のある時で結構ですので、ご対応いただけますでしょうか。」
お客様役:「はい、対応します。」
担当者役;「この度はお手数をおかけいたしました。また何かございましたらいつでもご連絡くださいませ。」
随分クレームの収束の仕方が変わりましたね。
ポイントは自分の話を進める前に、お客様の話をたくさん引き出すこと。
お客様にはここにご連絡いただくまでのストーリーがあります。
商品に傷があり、連絡しようか迷ったり、連絡先や対応方法を調べたりと言葉以上に大変だったことがあるはずです。
それをしっかりと聞き出し、そして背景やお客様が抱いた感情まで含めて謝罪を述べられるようにしましょう。
そもそも聞いていない情報に対して謝ることは出来ませんよね。
お客様がお話してくれた言葉に丁寧に耳を傾け相槌を打ちながら、さらに自分自身は少し遅めのスピード感で言葉を発すると良いでしょう。
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まとめ:「交渉が成功すれば、5分先の景色が違う」
冒頭の調査でもわかったように、現代の若者世代は社会人に出て間もないことも手伝って、交渉や会話が苦手な人が多くいます。
しかし経験や上手い下手かでなく、心がけるべきことは案外シンプルだということがわかりました。
ここまでの話をまとめると、交渉において最重要事項は「自分の意思や考えをまとめること」。
これに尽きます。
相手を説得し自分の要望に歩み寄ってもらうには、自分がどうしたいかを自分自身がよく理解することが必要です。
そして、その上で対話を通してたくさんの人の思考や理念に触れていくことで、一人では辿り着くことのない考え方を吸収してさらに知見を深めることが出来るのです。
そんな風にして自分と、そして相手としっかりと向き合い尊重し合える対話が出来た時、そこにはいつしか強い絆が生まれます。
有意義な交渉を重ねていくことで、いつしか様々な視点から物事を考えられ、豊かな人間性を手に入れることが出来るでしょう。
深い人間性の持ち主は、職場や取引先、仕事だけに留まらずプライベートでも人気者になります。
人は誰でも自分が尊敬できるような存在と共に過ごしたいと思うからです。
仕事上では若いうちから会社にとって重大なプロジェクトの担当に選ばれるなど期待され、10年20年と時を経て同期よりも飛び抜けた存在になれているはず。
交渉を成功させられるスキルを身に付ければ、5分先の景色が変わっていき、その積み重ねで未来がどんどん良い方向に変わっていくのです。
■苦手意識じゃ勿体ない!スキルを身につけるには…
いくら交渉がビジネスに良い影響を与えるとわかっていても、苦手なものは苦手。そう思う人も少なくないでしょう。
しかし、いつまでも人間関係を広げようとしないままでは開ける道も開けず勿体ないです。
具体的に、どんな良いことが起こるか想像してみましょう。まず交渉が得意になるということは、対話の力が身に付くということ。
スキルさえ手に入れられれば、今のように思い悩んだり躊躇ったりと心苦しい思いをしなくても、息を吸うように他人に話しかけられるようになります。
余裕が生まれれば人と話すことが楽しくなり、ビジネス上のやりとりであってもそれを楽しむことが出来るはずです。
こんなことがしたい、あんなことがしたいと自由な発想で交渉で実現させたいことを思い浮かべることは、世界各国の訪れたい土地に思いを馳せることに少し似ています。
良い旅になりそうだ!日常とは違う何かが見つけられそうだ!という心持ちで臨めば、交渉の中にもきっと楽しさを見つけられるはずです。
交渉や対話を乗り越えられるようになれば、自然と仕事の中にもよりやりがいを感じられるようになるでしょう。
■交渉を成功させるには(まとめ)
①事前に自己分析をしておく
②相手の立場になって洞察力を働かせる
③「具体的」かつ「単刀直入」に
④日頃から社内の相関図を理解して、うまく立ち回る
⑤事前準備を一番頑張る
■交渉を成功させるために使いたい技術
①要望をしっかり持ち、相手を説得するだけの情報を伝える
②プレゼンは要点が印象に残るように工夫を!
③直談判も恐れず積極的に!
④目的は資料ではなく、あなたや会社と相手を繋げること
⑤ミスの代償を何で支払うか、自分だけで決めてはいけない
⑥本当に売り込みたい企画は顔を合わせて伝える
⑦話を聞いてもらいたければ、相手の話を全部聞くこと
⑧謝罪の言葉は適切に使うこと
⑨理由や裏付けを伝えられるように心がける
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最後に
最後までお読み頂きありがとうございます。
今回では、【スキマ時間で学ぶ交渉力育成プログラム】についてお話をさせていただきました。
しかし、ビジネスには、ビジネスマナーをはじめとして、同僚との接し方、上司との接し方、商談相手との接し方、そして、交渉術、アフターフォロー等マスターして頂く項目が数多くございます。
そしてそれらのスキルを習得しようと思えば、それらをまんべんなく上達させていく必要があります。
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